入管法改正案が成立
外国人の労働者受け入れを拡大する「入管法改正案」が本日成立しました。
日本の抱える少子高齢化問題、人手不足の解消を目指したものです。
外国人労働者の実態を把握した上での改正案なのか、与野党がしっかり議論ができないまま成立してしまった印象を受けます。
争点は「移民政策」になるのではないか、国内情勢の悪化の懸念というところでしょう。簡単に説明していきます。
在留資格の改正
現在の、就労目的で「在留資格」が認められている職業は限られていています。
入国管理局が発表している「在留資格一覧表」(平成30年8月版)によれば、公認会計士、弁護士、学校教師、教授、医師など「高度専門職」が挙げられています。
そして、2019年4月から「在留資格」に新しく「特定技能1号と2号」を取り入れたのが今回の改正案です。
1号と2号の主な違いは、
・1号は在留期間が最長5年であるのに対して、2号では条件を満たせば永住も可能
・1号は家族の帯同は認められていないが、2号では家族の帯同が認められている
まとめると上記の点です。この永住権を与える点が「移民政策」になるのではという議論が生じているのです。
安倍首相は「移民政策」ではないとして、外国人を増やさないよう制限する方針で特定技能2号に対して厳しい条件をかけています。
また、人材の不足が解消されたりした場合は、必要に応じて受け入れ停止の措置も導入するそうで、「移民防止」について強く意識しております。
今回、1号で対象を想定しているのは14業種です。外食や農業、宿泊、飲食料品製造、自動車整備、建築、介護、漁業など対象となりました。
そして、2号はさらに少ない業種に絞り込みをかける計画でしたが、開始段階では2号に該当する業種なしでいくようです。
様子を見ながら2号の業種も登場することでしょう。
いずれにしましても、現に外国人労働者は増えつつあります。
在留資格には「技能実習生」と呼ばれる枠があり、学生兼業アルバイターとして外国人労働者の存在を加速させています。
学業が疎かにならないよう、本来は週に28時間までしか働こくとができないのですが、それだけの給料では生活ができない外国人もいます。
どうやらそれ以上に働いている実態など闇の部分も多数あるようです。
外国人労働者の受け入れを拡大するということは、仮に「移民政策」ではないとしても、「移民受け入れ」と似たような社会が誕生するのではないという声もあります。その場合、国内情勢が悪化する懸念もありそうです。
「移民政策」にはならないとしても、過去に起きた移民政策について理解を深めておくべきです。
各国の移民政策例
2002年、スイスとEUの間で「人的資本の自由を認める条約」により、EU加盟国の国籍の者はスイスに自由に入国することができるようになりました。
ところが、移民してきた外国人の強盗・薬物といった犯罪がクローズアップされ、国外追放の基準を設ける流れに。
また、スイスに移民してきた外国人労働者への低賃金が災いとなり、スイス国内の労働者の賃金に影響を与えることになりました。
日本でも外国人労働者が増えることで、国内労働者が外国人労働者に仕事を奪われる懸念もありますね。
ドイツでは移民政策の歴史は古く、戦後に人員補填のために「単純労働者」をトルコから招きました。
その後もブルガリアやルーマニアからの移民で増加していったものの、年金制度や児童手当の負担が圧迫する事態に陥りました。
こうした事態からもメルケル首相は多文化共生の難しさについて言及しています。ドイツの移民政策は事実上の失敗でもあります。
多文化共生についてはこちらをご参照ください。
https://tasogaren.com/多文化共生の社会
フランスでは、パリ同時多発テロのようにテロ事件が絶えません。移民した者が必ずしも労働・居住目的とは限らないということです。
国内情勢の悪化は避けたい
このように、移民の受け入れは様々な難題を抱えます。
今回の改正案が「移民政策」ではないとしても、外国人労働者を今後増やしていく訳ですから、入管法改正案はしっかり見直して議論を繰り返していくべきだと思います。
外国人労働者が国内に増えることで社会保障の悪用や、テロのような犯罪など懸念材料は尽きません。
国民の負担が増えないように、とくに「特定技能2号」については慎重に決めていくべきです。
労働者不足が解消されたとしても、他の問題が生じてしまっては逆効果です。
今後、少子高齢化社会に突入する日本ですが、安心して生活できるように国内情勢の悪化だけは避けて欲しいものです。