売上43万円、営業損失10億円の惨敗!
12月18日、フリマサービス展開しる大手メルカリは、イギリスでのメルカリ事業サービス撤退の発表をしました。2019年3月を目途に、退いていく方針です。
2018年6月期決算によると、売上は約3000ポンド、円換算で43万円ほどです…
そして、営業損失は約730万ポンドの約10億円という数字を叩き出しました。
さらに、撤退費用が2億円ほど発生するそうで、まさに「惨敗」という形で幕引きを図ることになりそうです。
本日の、メルカリの終値は2020円、場中には2000円を割る場面もあり、1973円を付けて年初来最安値を更新してしまいました。上場時から下落し続けており、止まる気配がありません。
本日は日経平均株価も9か月ぶりに21000円を割ってしまったため、少なくともそれも影響はあるかとは思いますが、間違いなく英国撤退の材料が重くのしかかります。
上場初日に付けた株価6000円の3分の1となってしまった現在の株価で時価総額は2880億円ほど。今後、株価が上昇に転じるためにも、引き続き「海外戦略」は要であり欠かせません。
海外戦略が重要な中、なぜメルカリはこのタイミングで英国を撤退してしまったのでしょうか?
まずはメルカリの海外戦略について、経緯を振り返っていき、一つ一つ紐解いてみたいと思います。
メルカリの欧州進出
日本のフリマ市場を独占してきたメルカリは、海外戦略を始めたのが2014年のことです。アメリカを拠点に活動するために「米国子会社Mercari, Inc.」を設立し、「Mercari」サービスを開始しました。
※国内のフリマサービスを「メルカリ」、海外でのフリマサービスを「Mercari」と区別して表記しております。
そして、アメリカでのテスト運用期間にも関わらず、翌年の2015年11月、欧州での市場開拓を目指してイギリスを拠点に「メルカリヨーロッパ」を設立しました。
迅速に世界展開を目指すメルカリの勢いはとどまることを知らず、まさにスピード感溢れる改革を行っていた訳です。
アメリカに次ぐ、欧州市場の拠点として英国に力を注いできたメルカリは、「販売手数料を0円」にすることで、ユーザー獲得を狙っていきました。
実は、2014年にアメリカで「Mercari」サービスを開始した時にも、ユーザー獲得のためにこの「販売手数料を0円」で攻めにいった背景があります。
そして、2年間に渡るテスト運用期間を経て、満を持して2016年より米国版Mercariは「販売手数料として売上金の10%」に引き上げたのです。
この2年間は、市場を分析して認知度を向上させるための準備期間です。しっかりとユーザーを獲得し、市場と動向を見極めていたわけですね。
つまり、このタイミングで英国を撤退したのは、設立から3年経過した分析結果をもって、英国版「Mercari」が、欧州市場では「事業が期待する水準に達していない」と判断したからですね。
なぜ、メルカリはこのような惨敗を迎えてしまったのでしょうか?何か要因があるのでしょうか?
強力なライバルと不利な環境
メルカリがサービスを開始した2013年当時、日本国内でのフリマアプリのライバルは、ヤフオクや楽天オークション、フリル、モバオクといったものがありました。
スマホで簡単に商品を出品できる「利便性」や、個人情報を知られずに発送ができる「らくらくメルカリ便」といった「匿名性」、商品が届いたことを確認してから出品者の売上金が計上される「安心感」を武器にユーザーを獲得していきました。
また、メルカリは独自の「値下げ文化」で、従来のオークションとは異なる、ユーザー同士での「場」を提供したのです。
従来の、高値で入札した方に対して「購入権利」が与えられるオークションスタイルでは、残り時間や価格が高騰する煽りで落札価格が上がる傾向が強かったのです。
容易にやり取りから「値下げ交渉」ができるシステムにより、購入者は出品者に値段交渉がしやすく、他のサービスよりお安く購入できることからも人気を博しました。
さて、英国ではどのようなサービス事業がライバルとなるのでしょうか?Amazonも候補に挙がりますが、さらに強力な敵は「eBay」というオークションサイトです。
世界で最大級のオークションサイト「eBay」の中でも、イギリスに特化したサイト「eBay.uk」がイギリスでは認知度が高く絶大に支持されています。
また、eBayは「フリマアプリ」の役割も担っていたことから、Mercariがユーザー獲得に苦戦したのも、この老舗で最大級のeBayからユーザーを奪うことが困難であったためだと考えられます。
次に、イギリスのモバイルネット回線の裏事情が要因として挙げられます。
Mercariは「利便性」を売りとしているように、スマホ出品から購入まで完結するシステムが魅力です。
ところが、スマホの回線速度が遅いイギリスでは、商品の写真に読み込み時間がかかり、商を閲覧するのも、出品作業をするのも、かえって使いづらいアプリとなってしまった可能性があるのです。
こうした事情からも、思いのほか英国でユーザー獲得に苦戦してしまったMercariは、「撤退」に追い込まれることとなりました。
とはいえ、今回の英国撤退を受けてもメルカリは「グローバル展開」をあきらめてはいません。
時期やタイミングを見計らって、再度、欧州市場への「進出」を検討するとのことです。
今は、ひとまずアメリカに専念し、認知度や市場を確立したうえで再度、欧州市場を狙っていく可能性があります。
そして、欧州再進出で成功することができれば、今回の撤退は「失敗」ではなく、戦略的な価値のある「撤退」となるでしょう。
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