中国市場を失ったドルガバ
たった1つの広告動画を発端に、D&G(ドルチェ&ガッバーナ)で知られるドルガバが中国市場から消え去ろうとしています。
問題の動画は、中国人と思われるアジア系の女性が、パスタやピザをお箸を用いて食べる内容なのですが、「人種差別」と批判を浴びたのです。
その後、ガッバーナ氏がSNSで、中国をさらに侮辱する発言や暴言をしたことから事態がさらに悪化しました。
動画を配信した翌日に上海でファッションショーが行われる予定でしたが、中国のモデルさんたちがボイコットするなど、ショーを急遽中止に。
ドルガバの中国広報アンバサダーをしていたディラリバさんが契約を打ち切り、チャンツィイーさんもD&G商品の「購入&使用」を禁止すると表明しました。
炎上は収まらず、侮辱に対抗したパロディ動画やハサミで商品を切り刻む動画が多数ネットに投稿されました。
業績の悪化懸念
中国市場を失う深刻さは測り知れません。なぜならアパレル市場はおおよそ20兆円とも言われています。
また、中国市場だけでなく、他国の売り上げにも影響が及ぶかもしれません。今回の件で、他の国でも客離れは生じたと思います。
ドルチェ&ガッバーナの昨年の売り上げは1670億円で、そのうち中国市場が占めていたのは3分の1以上ほどでした。
今回の騒動が長引いてドルガバ製品が「追放」された場合、600億円近くの損失が出る可能性も懸念されています。
つまり、「中国市場」はドルガバの売り上げを支える大切な顧客様でもあり、巨大な市場でもあります。
蔑ろにしてはいけないと同時に、将来的にアジア圏の市場を狙うためにも中国市場は無視できないのです。
中国最大のEC企業アリババをはじめ、JDドットコム、YNAPなど各社が運営するサイトからもドルガバ製品の削除が行われました。
ECサイトだけでなく、空港の免税店からも商品が撤去されたのです。店舗で扱うだけで非難されてしまいます。
中国はとにかくスピードとパワーがあり成長していく市場です。若者が1億人以上いる事実からも、将来的に伸びていく市場を失った一連の流れはあまりに痛手です。
チャイナリスク
問題となった動画は中国だけでなく、「お箸を用いる文化」に対して軽蔑しているかのような嫌悪感を抱く内容でした。
ということは、中国だけでなく日本を含めたアジア圏でもこの動画に敏感に反応した方は多かったともいます。
仮にイタリアでは特別なユーモラスセンスをお持ちであったとしても、あのような宣伝動画を配信した意図がよくわからないです。
ところが、日本人は謝罪に対して寛容な気質があり、相手を許す文化性もあることから、ここまで大事にはならなかった可能性があります。
中国はとにかく民族のプライドが高い国です。仮にこの状況でドルガバをに同情したり擁護した者は糾弾されるほどです。
ドルガバ製品を所持すると日国民のごとく当然のように罵倒され、お店に行っていく姿を撮影されてSNSで吊し上げらえるほどです。
これが「チャイナリスク」であり、一つの大きなムーブメントに対して国民が一丸となって立ち向かわざるをえない圧力でもあります。
逆にいえば、この中国の気質を理解して、上手に付き合っていくことで、巨大市場を獲得することもできました。
ドルガバはそのような市場となる各国の文化的な戦略も対策して検討するべきでしたね。宣伝動画は奇抜性や斬新さだけでは成り立ちません。
初心に戻り、自己満足的な面白い動画ではなく、お客様が喜ぶ、感謝を込めた動画を考えることが基本であります。