拡大する貿易赤字
米中が関税の掛け合い合戦をしている中、12月8日に中国より11月の貿易統計を発表しました。
それによると対米貿易黒字は356憶ドル(約4兆円)で過去最大となったそうです。
トランプ政権が各国に対して関税の引き上げを行っていますが、このようにアメリカが抱える「貿易赤字」の実態も深刻な問題なのです。
「356億ドル」という数字も重大な問題なのですが、前年同月比に対して28%増しで拡大していることも懸念材料です。
トランプ大統領が、今後さらに激しい関税措置を設けてくることは容易に想定できます。
一時休戦?
12月1日にG20で米中首脳会談が開催され、習近平国家主席とトランプ大統領の間で、以下の3点について合意がありました。
①関税問題、サイバー攻撃、技術移転の強要、知的財産の保護といった構造改革協議を速やかに開始
②中国がエネルギーや農作物、工業製品を「相当量」、アメリカから輸入すること
③中国からの輸入品に対する関税は2019年度も「10%」のままで、現時点では「25%」の関税引き上げを見送る
そして、重要なのは③の関税見送りについてです。中国としては関税引き上げを阻止したいところであり、他の項目に関しての合意が、今回のトランプ大統領の「交渉」なのです。
合意がなければ、関税が25%に引き上げられるのですが、追加関税の導入に90日の猶予期間を設けました。
この「90日の猶予期間」については、米中が歩み寄り貿易戦争が緩和されるとして好感される内容でした。
一方で、クリスマス休暇と中国の旧正月を意識しての配慮であり、「90日の猶予」はあくまでその場しのぎに過ぎないのではという意見も出ています。
その場合、猶予期間の90日を迎えるころには、再度トランプ大統領が強気の発言で「交渉」を中国に迫る状況も予想されます。
言わば一時的な「休戦」と考えることもできます。
悪化する米中関係
融和ムードが見られた米中関係でしたが、先日の中国通信機器大手である華為技術:ファーウェイ(Huawei)の幹部逮捕の衝撃的な報道で事態は一転しました。
トランプ大統領は最高財務責任者(CFO)の逮捕について言及しており、米中通商交渉には影響を及ぼさないと言っています。
しかし、ファーウェイは中国政府と官民一体企業でもあるため、米中関係の悪化は免れられないのではないでしょうか。
習近平国家主席は、貿易摩擦を緩和するために中国市場開放をアピールしていますが、貿易摩擦解消への糸口がまったく見えてきません。
お互いが関税をかけあうことで泥沼化していく展開は避けたいところです。貿易戦争に勝者はいません。今後「関税マン」と名乗るトランプ大統領の発言に注目です。