TSUTAYAの新しい挑戦
前回、TSUTAYAのレンタルショップが窮地に追い込まれており、相次ぎ店舗数を減らしている背景から、ビジネスモデルの変革の時期について触れました。
https://tasogaren.com/tsutayaは生き残れるか
動画配信サービス利用者の増加も逆風となり、2007年は約3600憶円近くの市場規模があったレンタルビデオ市場も10年近くで約1800億円の規模に半分に縮小。
TSUTAYAにとっても事業の見直しは余儀なくされました。しかし、レンタル事業が縮小傾向ながらも、他の部門においては着実に売り上げを伸ばしている場面もあります。
今後はどのような変革を目指していくのでしょうか?
その前にまず、TSUTAYAの歩みから振り返ってみたいと思います。
「蔦屋」から「TSUTAYA」へ
TSUTAYAの歴史は関西地方の書店から始まります。
「枚方市の若者に、文化をもっと手軽に楽しんで欲しい」という願いから、1983年3月大阪の枚方市に蔦屋書店1号店が誕生しました。
書籍だけではなくビデオも扱うスタイル、夜23時までの営業という利便性の良さが若者を中心に受けて利用者が増えていきました。
その後はネットの普及に併せて1999年7月に「TSUTAYA Online」を開始するなど時代の流れに沿って事業を拡大していき、2000年にはマザーズ上場、2003年には東証一部に市場変更するなど順風満帆な歩みでした。
しかし、レンタル屋さんのイメージが強いように、レンタル市場の規模の縮小や、TSUTAYAを支える親会社であるカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC株式会社)の意向もあり、2011年には東証一部上場廃止となりました。
そして、上場廃止してから5か月後の同年に、レンタル屋であったTSUTAYAから、新しく変革するための挑戦として開業したのが「代官山 T-SITE」でした。
TSUTAYAから「蔦屋」に
それまでレンタル屋のイメージであったTSUTAYAを抱えるCCC株式会社はシンプルな事業展開でした。
そんな中、「代官山 T-SITE」を開業したのは大きな意味があります。時代の流れに沿った事業展開です。
たんに書籍やDVD、音楽といったメディアだけを楽しむスタイルから、
カフェや飲食店、ショッピングができる店舗、雑貨屋、クリニック、ペットショップ、フリースペース等の異なる内容と組み合わせて楽しむ新しいスタイルの価値創造を目指した空間です。
書店ではない複合型施設を生み出すことで「レンタル屋企業」から「企画企業」に誕生したのです。
価値創造とブランド化
「T-SITE」だけでなく、モバイル事業や子育て事業を担うCCCデザイン株式会社からみても事業の多角化が見て取れます。
癒しや豊かさ、居心地を想像する会社です。
クレジットカードサービスであるTカード、キャッシュレスでスマホから電子決済サービスができるTマネー、ポイントが貯まるTポイントカードなどを手掛けるCCCマーケティング株式会社も、我々の生活に利便性を提供しています。
「T-SITE」「Tポイントカード」「Tモバイル」にみられるように、TSUTAYAが目指してきたものは新しい価値創造とブランド化です。
頭文字の「T」を見ただけで、我々は「TSUTAYA」を思い出すほど根付いているのです。
そして、ここまで導くことができたのも、TSUTAYAがレンタルショップや書店の店舗を地域密着して生活に溶け込んできたからでもあります。
TSUTAYAと歩む新しい価値
店舗数を減らしていったとしても、前向きな戦略であり、ブランドを確立させることに成功しました。
今までの店舗は、そうしたブランド化のための布石となったのです。
次のステップへ準備は整いました。
今後は「企画企業」として、どのような利便性や楽しみを見出し、我々に届けてくれるのでしょうか。
時代が変わろうとも、その想いや意志は「蔦屋書店1号店」の時から脈々と受け継がれています。
まだ経験したことのないTSUTAYAが描く将来のビジョン、
新しい「TSUTAYA」に出会えるのがとても楽しみです。