世界経済の低迷が浮き彫りに
3月14日と15日、日銀金融政策決定会合で、短期金利をマイナス0.1%とする「マイナス金利」、長期金利をほぼ無金利とする「ゼロ金利」政策の現状維持について、賛成多数で決定しました。
そして本日、政府は3月の月例経済報告を発表し、景気判断を3年ぶりに下方修正しました。中国経済の減速が影響して、輸出の伸びが鈍化しているようです。
輸出と生産、海外経済の判断を下方修正したものですが、どうも世界経済の緊迫した状態が日本国内にも波紋してきているのか、景気の冷え込みを感じますね。米中貿易摩擦が背景にあります。
冷戦状態の米中貿易戦争ですが、今月末に動きがあるようです。新華社の発表によると、3月14日に米中が電話協議し、3月25日にトランプ大統領側近のロバート・ライトハイザー通商代表部らが3月25日の週に北京入りします。
中国の劉鶴副首相と会談する予定であり、その翌週には劉鶴首相がアメリカに国内入りする模様です。これを機にお互いが歩み寄り、冷戦状態からなんらかの進捗はあるのでしょうか?日本経済も巻き込まれるだけに気になるところです。
そもそも今回の米中貿易摩擦ですが、中国と米国、どちらが優位なのでしょうか?
世界第二位のGDPにまで登り詰め、米国を追い抜こうとしている中国ですが、現状では米国に対して優位に立てない「壁」が存在しています。
中国が米国に優位に立てない理由
14億人以上のヒューマンパワー、共産党による国家レベルで計画的に進む発展力を武器に、世界各地を網羅して組子のようにアメリカ経済にまで入り組んでいる中国は、米国にとっても脅威に感じる強国であります。
以前のHuawei幹部逮捕の際にも、中国の経済成長が顕著に現れていました。同社はAppleのスマホ出荷台数を追い抜き、スマホ市場シェア2位となったのです。また、次世代通信網技術5Gにおいて、米中が覇権争いを繰り広げていることも話題となりました。
確かに中国の勢いや爆発力は、米国にとって脅威ではありますが、そんな中国でも米国には優位に立てない事情があるのです。今回は2つの観点からご紹介します。
理由①:米国の国債
まず、中国が米国に対して優位性を保つ要素として度々登場していたのが「米国の国債」です。米国の国債を約1兆円ドル近く中国は所有しており、米中が対立した際は、この国債が大量に売られてしまいアメリカ経済を潰しにかかるといった説があります。
一見、米国国債を大量に所有している中国は、アメリカの首根っこを掴んでいるようで優位に見えます。しかし、この説は非現実的なものであり、まったく根拠がありません。
もし、中国が仮に米国の国債を売り、持ち分を市場に放出したとしましょう。
そしたら米国の対抗処置は簡単で、売られた量の国債を米国のFRB(中央銀行制度の最高意思決定機関)が買い戻すだけなのです。
市場に出回った国債をFRBはいくらでも買い戻すことができます。日本銀行が日本国債を購入して買い支えするのと同じ仕組みですね。
また、中国が少量でも市場に米国国債を売り飛ばしたとしたら、市場は何を思うでしょうか。中国は「ドル」が欲しいから米国の国債を売る行為をしていると考えてしまいます。
となると「人民元危機」に繋がると予測し、中国が米国の国債を手放せば、ますます売られることになります。
このように米中の関係は持ちつ持たれつ、米国国債に関しても相互に関与している部分がある訳ですね。というよりも、中国が「ドル」から離れることができないといったところでしょうか。
米国の国債を売れない中国が、「ドル」に頼っている現状こそが、米国に優位に立てない1つ目の理由であり、そもそも、米国の国債を売るなどそのようなことを中国がする訳がないと、アメリカ駐在の中国大使も発言しているのです。
理由②:「ドル」と「人民元」の格差
また、米中の大きな差が「ドル」と「人民元」の信頼性です。国際通貨である「ドル」は世界の各地域で決済手段として利用可能ですが、「人民元」を安心して取引に利用する国は少ないです。
要するに、人民元は国際通貨に適していません。エネルギーも穀物もテクノロジーも全ての決済において「人民元」では売買に向かず、貿易交渉において「ドル」が優位に立ちます。
裏付けとして、中国の習近平国家主席を含む共産党の幹部や要人たちですら、中国の「人民元」を信じていない実情があり、資産運用を人民元で行っていません。
彼らは米国に会社を持ち資産をドルで運用しています。マネーロンダリングのようなものです。アメリカに秘密裏に資産を所持しておりドルに頼っている背景からも、アメリカに優位に立ちにくいのです。
現にHuaweiの幹部が逮捕された時、イランに対して決済した方法が「ドル決済」であったことからも証明しています。マネーロンダリングの時にはドルが使われている実情です。
ドル決済ゆえに発覚した訳ですが、そもそも「人民元」で決済していたら発覚していない問題でもあったのです。
世界からも中国内からも「人民元」の信用が乏しい現時点で、国債通貨としての「ドル」に頼っている中国は、米国には到底優位に立つことができないという訳です。
今後、米中の優位性が逆転する可能性もある
米中貿易戦争が激化する中、現状の中国が米国に優位に立てない理由について説明していきました。いかがだったでしょうか?
もちろん、貿易摩擦は中国だけでなく米国にも損失が発生します。お互いの経済にダメージが出ててしまうので、このまま米中が対立し続ける訳にはいきません。関税の掛け合いに勝者はいないのです。
流れとしてはアメリカ側が折衷案を提示することが考えられますが、貿易戦争でも5G覇権争いにおけるテクノロジー戦争でも、世界の主要通貨が「ドル」である以上、中国は米国に優位に立てない状況です。
ただし、今の世界経済の観点から分析したものであり、今後の中国の動き次第では優位性が一気に逆転に加速することも起こりえます。
国際通貨として主流であった「ドル」ですが、今後「人民元」も国際通貨に加わった場合は、ドルに頼る必要がないため、中国も米国に強気に出ることができます。
この、「人民元を国際通貨にする」ことこそが、中国が世界経済の中心になるための条件でもあり悲願でもあります。そうさせないように抑止力をかけているのが米国という訳ですね。
米中貿易摩擦が今後どのような展開を迎えるのか、4月の米中会談が非常に興味深いものとなりそうです。そして、日本経済にも大きく左右される内容ですから要チェックです。