サウジに忖度
サウジ記者カショギ氏暗殺の件で、今トランプ大統領は崖っぷちの状態に陥っています。
サウジアラビアとの繋がりを意識しつつ、米国内からの支持も脳裏に、トルコの要請や世界からの視線も考慮して……まさに泥沼化しています。
11月20日、トランプ大統領は「サウジ皇太子は関与しているかもしれないし、関与してないかもしれない」「CIAは決定的な証拠を掴むことができなかった」としてサウジ皇太子の関与は名言しませんでした。
CIAが「サウジ皇太子が暗殺に関与していた」と報告をあげており、証拠とされている音声データは「聞いてない」としております。
アメリカにとって、何千億ドルもの武器を購入してくれるサウジアラビアは大切な顧客様でもあり、そう簡単には繋がりを断ちたくないようです。
ムハンマド皇太子の関与を明言しないことで、サウジアラビアに「忖度」した形となるでしょう。
中国とロシア
トランプ大統領はインタビューの際、「中国」と「ロシア」を名指し、サウジアラビアとの関係性強化を主張しておりました。
「サウジは何千億ドルもの武器を購入してくれる、ここで断ったら中国とロシアは大喜びだろう。そう簡単にサウジとの取引を中国、ロシアに譲るつもりはない。」
背後にある中国やロシアを意識しているようです。
武器ビジネスを中国やロシアが狙っているのか、ビジネスが奪われてしまうのか……は、さておき、サウジアラビアと中国・ロシアが密接な関係にあるのでしょうか。
それぞれの関係性とサウジアラビア市場への狙いを説明していきます。
①中国とサウジアラビア
中国は、ハラマイン高速鉄道プロジェクトに1.6兆円もの投資をしています。メディナとメッカを繋ぐ鉄道で、路線全長453キロメートル。
時速300キロの速度で運行が可能です。2018年10月11日より開業しております。
また、石油パイプラインのプロジェクトでは、中国は約800キロメートルの長さの182のパイプを610億円で落札しております。
そして、住宅建設契約も増やしており、2020年までには2万7000戸にのぼる予想。こちらには約4400億円ほど注ぎ込んでおります。
中国はサウジアラビアの「インフラ」を狙っているのです。
②ロシアとサウジアラビア
ロシアはもともと、サウジアラビアの敵対国になる存在です。シリア側のロシアはアサド政権を後ろ盾していた点が挙げられます。
そんなロシアがサウジアラビアと密接な関係をとるのは、どのような思惑があるのでしょうか?
2017年、ロシアはサウジアラビアと共同投資ファンドを立ち上げました。様々な事業への投資を協力し合う流れを確立したのです。
天然ガス開発事業では、約2兆円の投資をしております。(サウジアラビアは30%の出資)
そして、ロシアが最も注目しているのが、未来都市「NEOM」開発プロジェクトです。
再生エネルギーや人口知能(AI)、ロボットテクノロジー、IT、ハイテク産業技術を駆使し、世界経済の貿易やイノベーションのハブとなる都市を目指しており、サウジアラビアのムハンマド皇太子が50兆円以上の規模を投資するとしています。
先日、ソフトバンクの孫正義会長も事業への参加表明をしたことで話題になりましたよね。
この大型プロジェクトに、ロシア政府系のファンドも参加することを発表しております。
このように、ロシアがサウジアラビアに急接近した背景には、ロシアの直接的な恩恵だけでなく、アメリカとサウジアラビアの繋がりを抑制するためであるとも言われております。
ロシアは「投資事業、ガスといった資源、アメリカを牽制」という思惑でサウジアラビア市場を狙っている訳ですね。
アメリカが狙っているのはもちろん、「貿易取引市場」ですが、中国やロシアの思惑がある以上、サウジアラビアの市場を切り離したくはありません。
とくに貿易赤字を気にしている米国は、中国との貿易摩擦などサウジアラビアと良好な関係を目指すことで輸出で大金を稼ぎ出したい思惑があります。
トランプ大統領としては中国やロシアを警戒しており、アメリカも遅れを取りたくない一心で、サウジアラビアとの「繋がり」を大切にしたいところなんでしょうね。