進化系アイドル
日本のアイドル市場は年々増加傾向にあり、2017年では約2100億円の市場規模、2018年はさらに上回ると想定されています。
とにかくサブカルチャーの中でも熱が入っている市場で、日本を代表する娯楽文化と言えるでしょう。
アイドル文化に熱中している国は日本含めて韓国などアジア圏に多いのですが、欧米では「アイドル」と表現することは少なく、女性多数のグループを「ガールズグループ」と呼ぶことが多いです。
また、この欧米版ガールズグループは、現在の日本版「アイドル」とでは少し定義が異なります。
厳密にいうと、「アイドル」の概念が時代の流れと共に変化してきたと言えるでしょう。
昭和のアイドルは、言わば雲の上のような敷居の高い存在でした。普段の私生活から完全に謎に包まれており、隔離された「非現実感」を醸し出していました。
容姿端麗で歌って踊れてドラマ等の演技もできちゃう「非凡人的な完璧な存在」として、売り出されることが多かったようです。
海外では「歌姫」と呼ばれるように、容姿や才能がずば抜けて秀でたカリスマ性のあるアーティストが支持を得ることが多く、昭和のアイドルはまさにこの立ち位置を狙っていったのでしょう。
身近なアイドル
しかし、現在の21世紀型アイドルは「親しみやすさ」やオープンな「自己主張」を得るするアイドルが主流となっており、AKB48や距離感の近いアイドルが人気化しています。
各アイドルグループが各々の個性を活かしてファンを獲得していくのです。時にはバラエティー番組で芸人顔負けの笑いをとることもあります。
美少女コンテストで優勝を獲得するようなレベルの人材を必要としなくとも、コンテスト30位や48位の子でもグループに入れることから、昭和アイドルに見られた「唯一性」「神秘性」としてのアイドル概念は消滅しています。
そもそも大勢の人数でユニットを組む時点で、そのような「唯一無二」の存在を狙っていません。求めているのは、どこにでもいそうな庶民的であることや「身近さ」なのです。
まるで学校時代、同じクラスメイトで可愛かった女の子がアイドルをしているようなクオリティです。その需要を見出して、市場へ売り出していった秋元康先生の先見性とプロデューサー能力は素晴らしいですね。
疑似アイドル
さらに、身近なアイドルを追求した形が「地下アイドル」となります。いつでも手軽に会いに行けるアイドルの解釈は欧米では考えられない現象でしょう。
庶民的な「地下アイドル(地下ドル)」と呼ばれる、距離が近いアイドルの存在は世界を見ても非常に稀です。
仮に、昭和型アイドルを本来の「アイドル」と位置付けるのであれば、21世紀型アイドルは「疑似アイドル」と表現することができます。
つまりアイドルなようでアイドルではないのです。地下アイドルになると、さらにその表現の仕方が濃厚となります。
正確にいうと、「アイドル活動をしている普通の女の子」というニュアンスでしょうか。
庶民的でもあり、敷居もそこまで高くない点が「地下アイドル」の良さでもあり、日本文化に溶け込んでいったのです。
地下アイドルは日本独自の文化
それではなぜ日本では、身近な存在である「地下アイドル」が受け入れられたのでしょうか?
それは日本人特有の、「不完全さに魅了される美学」が存在するからではないでしょうか。
例えば、左右非対称な建造物に「美しさ」を感じるのは日本くらいでしょう。
一方で欧米諸国を見てみますと、綺麗で左右線対称な建造物が多いことからも、「完璧さ」に美しさを感じていることが、歴史的にもわかります。
欧米諸国では「神秘的」「唯一無二」の存在が受け入れられ、庶民的なアイドルは、なかなか認められない文化が根付いているのです。
つまり日本は、完璧でない状態に感じる美学や文化を持ち合わせていることからも、「未熟さ」に価値があると捉えている国なのです。
ファンは自分が応援したい子(推しの子)と身近に触れ合うことができ、成長過程を楽しむことができるのも「未熟さ」に込められた魅力です。
「不完全に対する美学」が存在する限り、地下アイドルに見られる「身近なアイドル」の需要は絶えません。
日本を代表する「アイドル」文化は世界へ発信されていき、脈々と世界に浸透しつつあります。
今後もアイドルは進化していくことでしょう。