法律の見えざるバリア
東名高速道路の「あおり運転」事故で、石橋被告に対して、検察側は懲役23年を求刑しました。
両親を失った遺族のことを考えますと、石橋被告に憤りを感じる事故であり、懲役23年の求刑は刑罰として軽いように感じました。
ところが、危険運転致死傷罪と認められない場合、懲役が僅か数年の判決が言い渡される可能性もあるのです。
なぜなら、過失運転が適用された場合は懲役が7年以下の刑罰であり、「法律が阻むバリア」に毎回疑問を感じてしまいます。
今回のケースでは、当初、石橋被告を過失運転で逮捕している背景もあり、判決の際は危険運転致死傷罪にまでもっていけるのでしょうか。
現在の法律では、自動車を停車した後に生じた衝突事故にまで、危険運転致死傷罪を適用させることができるのかが争点となっているようです。
つまり、法の壁の敷地内で、検察側は考えうる最大の刑罰として、「懲役23年」を求刑したことになりますね。
事故が起きてからでは、いかなる処罰を課したとしても遺族は報われません。できれば、こうのような悲惨な事故は未然に防ぎたいものです。
厳罰化すると防げるのか
刑罰を重くすること予防になるでしょうか?
危険運転致死傷罪で社会問題になった例として、2006年、福岡海中道で起きた飲酒運転事故が挙げられます。
この飲酒運転事故でも、「危険運転致死傷」と「過失致死傷」が焦点となりました。事故をもたらした当時22歳のドライバーが証拠隠蔽を図ったことも問題視されました。
それは「ひき逃げ」をした方が刑罰が軽くなる現状だからです。
飲酒を証明できないため、厳罰化すればするほど、「ひき逃げ」を誘発するだけなのではとの意見もあります。
ところが、2009年には酒酔い運転をした時点で「懲役5年又は100万円以下の罰金刑」に法が改正され、飲酒運転をするドライバーが減っていきました。
警察の取り締まり強化も支えとなり、2006年頃に発生した飲酒運転の死亡事故が、10年間で3分の1ほどまでに減っていった経緯があります。
また、飲食店でも酒類を提供する場合は、運転有無の確認をするなどして、社会的に「飲酒運転」を締め出して撲滅していこうとする「風潮」が形成されていったのです。
今後の法整備を
飲酒運転の例からも、「あおり運転」を撲滅するためには厳罰化したルールを定めることで成果が出てくると思います。
また、法が整備されることで警察も動きやすくなり、市民も事の重大さを理解していくのです。
そして、取り締まりの強化や社会的な風潮として「締め出し」をしていくことで、「あおり運転」が危険な犯罪行為という意識に世間レベルで変えていくのです。
既に警視庁は動き出していて、東名高速のあおり運転事故のように、近年問題視されている「あおり運転」の取り締まり強化を全国で進めています。
2017年12月より、「事故に至らなくても」免許を取り消しができるように、適切な処分をするよう警視庁が全国の警察に通達しました。
「事故に至らなくても」という部分は、大変大きい意味がありますね。そのような危険な運転をするドライバーを未然に把握し防ぐことができます。
ちなみに、事故が起きてないのに処分できるのは、道路交通法で「将来的に事故を引き起こす可能性があるドライバー」に対して、処分をすることができるからだそうす。
「あおり運転」をする時点で、運転する資格はないと思います。
飲酒運転の死亡事故が減っていった過去事例のように、法整備や地域での取り組み強化で「あおり運転」も減らしていくことができるはずです。